ついに解明!チーズの穴の秘密

今や日本でも日常的に食卓へのぼる食品となったチーズ。
ブラックペッパーやナッツが入ったキューブ型チーズ、スライスチーズ、キャンディチーズ、割けるチーズなど、味も形も様々なチーズが市販されていますが、これらはプロセスチーズと呼ばれるものです。
プロセスチーズは一種類または数種類のナチュラルチーズを加熱して溶かし、乳化剤を加えて成型したものです。加熱殺菌によって発酵が止まるため保存性が高く、風味も一定しているので比較的食べやすいチーズです。
いっぽうでヨーロッパ等で古くから製造され親しまれてきたのがナチュラルチーズです。
その名のとおり ナチュラル=自然なチーズ で、中に含まれている乳酸菌も生きたままですので時間とともに発酵が進んでいきます。
このように一口にチーズといっても様々な種類が存在しますが、さて、みなさんは「チーズ」と聞いた時に頭の中にどんな形のチーズを思い描くでしょうか?
年代によって差はあると思うのですが、私は断然、下の写真のようなチーズを真っ先に想像します!
表面は少し硬そうだけど中身はしっとり柔らかそう。そして何より特徴的なのは無数の穴が開いているところです。
子供のころにアニメや絵本で見たチーズはいつもこんな感じで描かれていて、側にはいつもネズミがいるのがお決まりのパターンでした。ついでにこの無数に開いた穴、ネズミが食べた跡だと子供のころは考えていました。
大人になってからはチーズの穴のことなんて気にしたこともありませんでしたが、スイスの研究者がなんと100年ぶりに穴の秘密を解明したとの記事を見つけたのでご紹介します。
スイスの農業研究機関であるAgroscopeは、エメンタールやアッペンツェラーといったスイスチーズに特徴的な無数の穴は、ミルクに混ざっている干し草の粒子によって発生していると報告しました。
この謎の穴に関する研究は、1917年にアメリカ人研究者 William Clark氏 が詳細な研究を行って以来ずっと続けられてきたというから驚きです。
当時、Clark氏 は謎の穴を作り出す犯人は、ミルクの中に存在するバクテリアが出す二酸化炭素だと結論づけていました。
最近になってAgroscopeの研究者は、チーズを製造する際に使用するミルクが近代的な設備によって搾乳された場合には穴が小さくなったり、あるいは穴そのものが無くなってしまうことに着目しました。
搾乳の際、昔はフタのないバケツにミルクを溜めていたため干し草の粒子がミルクの中に混ざり込んでいましたが、近年ではしっかりとカバーされた搾乳機によってミルクが絞られるために混ざり込む余地がなくなり、過去10年から15年間でチーズにできる穴の数が少なくなってきていると報告しています。
【昔の搾乳】これでは干し草がたくさん入りそうですよね
【現代の搾乳】衛生的で干し草も入り込む余地なさそうです
近代化による製造方法の変化が食品の特徴までも変化させてしまうという興味深い例だと思います。
そして何よりも、100年もの間ずっとチーズの穴の研究を続けてきたとは、スイスの人たちのチーズへ寄せる熱い思いを感じずにはいられない記事でもあります。
参照(theguardian)